近衛忠輝

人類は,農耕,牧畜等によって自ら食糧を確保する手段を身に付けるにつれて,次第に行動圏を拡げ人口を増やしてきた。それでも,食糧の絶対量の制約や.戦争,疫病による死亡率が高かったために,人口の白然増加は中世まではなだらかなものであった。西暦元年の2.5億人は,ようやく1600年かかって倍の5億人になっている。そのころヨーロッパでは,新大陸からもたらされたトウモロコシや馬鈴薯が急速に広まり,食糧不足はやがて解消して1830年には人口は10億に倍増した。その後の環境衛生,医学の進歩と生活水準の向上は,今世紀に入っての人口の爆発的な増加をもたらした。そして人類による大規模な環境や生態系の破壊は,今や地球上の全ての生物の生存を脅かすに至っている。 途上国では伐採された樹木の10分の1から20分の1しか植林されず,その結果2000年までに毎日100種類の動植物が死滅するという。人類が自ら招いた災難に苦しむのは自業自得であるが,とばっちりで死滅した動植物からみれば,これは明らかに人災である。それを“天災”と偽って,責任を天になすり付けるようなことがあれば,抹殺された生物は浮かばれないだろうし,それこそ天罰だって下りかねない。